XTCとそのプロデューサー達。

XTCは長い歴史の中で一度もセルフプロデュースをしていません。(なんでなんだろ?)そしておなじプロデューサーと何枚も作品を作る事はせず、大概一枚のアルバムに一人のプロデューサーで、次作は別のプロデューサーを依頼します。(なんでなんだろ?)
有名な方から無名な方まで色んな方がプロデュースしていますが、無名だった人がXTCとの仕事以降、売れっ子プロデューサーになるなんて事がざらにあり、(当のXTCは売上伸び悩みなのに)XTCにはプロデューサーを育てる力があるのかもなんて思ってしまいます。

○ジョンレッキー(「white music」「Go2」デュークスオヴストラトスフィアの諸作品。)
XTCの1st、2ndに関わった、経験の豊富なプロデューサーですが、やっぱりこの人もXTCから売れっ子プロデューサーになった人といっていいでしょう。一番の出世作はストーンローゼズの1st。ローゼズのメンバーがデュークス(XTCの変名バンド)みたいなサイケデリックサウンドを鳴らしたくてレッキーを指名したという噂。
THE STONE ROSES 「石と薔薇」(ジョンレッキープロデュース)

THE STONE ROSES

THE STONE ROSES


○スティーヴリリホワイト(「Drums&wires」「Black sae」)
アンディが1st、2ndはドラムの音が弱いと、ヴァージンの制作会議で話したところ、白羽の矢が当たったのがこれまた当時はほぼ無名のリリホワイト。彼がプロデュースしたスージー&ザバンシーズの1stのドラムの音を聴いて、即決で彼にプロデュースを依頼。このドラムの録音技術が現在の業界水準となっています。(ちなみにそのドラム録音の監督指揮をしていたのが、次にXTCをプロデュースすることになるヒューパジャム。)
スージー&ザ・バンシーズ 「香港庭園(ホンコン・ガーデン)」(スティーヴリリホワイトプロデュース)

香港庭園(ホンコン・ガーデン)

香港庭園(ホンコン・ガーデン)


○ヒューパジャム(「English settlement」)
リリホワイトの右腕 (悪く言えば雑用)だったパジャムも、これをきっかけにポリスやジェネシスのプロデュースを成功させて、ナイルロジャースと並び80Sを代表する売れっ子プロデューサーに。
Police 「Synchronicity」(ヒューパジャムプロデュース)

synchronicity

synchronicity


○スティーヴナイ(「Murmer」)
そろそろXTCに英国を代表するくらいのバンドになって欲しい(そのくらいのポテンシャルは持っているはず)というヴァージン側が、薦めたのが、JAPANの「錻力の太鼓」のプロデューサーでジョージマーティンの門下生の売れっ子プロデューサーのナイ。(ただしXTCはナイのプロデュースが気に入らず、殆どをリミックスし直す。)
JAPAN 「錻力の太鼓」(スティーヴナイプロデュース)

Tin Drum

Tin Drum


○デイヴィッドロード(「The Big Express」、シングル「Thanks for Chrismas」(スリーワイズメン名義))
前作「Murmer」のセールスもパッとしなかったXTCが次に依頼したプロデューサーは、何を思ったか、主にクラシックの音楽家をプロデュースしてきた過去を持つロード氏。彼の最高の音作りへの追求、探究心、音楽のあらゆる知識に「僕たちのジョージマーティンなんじゃないか。」と一時アンディは思ったそうな。(あくまで一時。ロードはアルバム完成前に、他の仕事で現場を離れてしまった為、そこでアンディとの師弟関係も終わり。)
Peter Blegvad 「Naked Shakespeare」(アンディパートリッジプロデュース、デイヴィッドロードはエンジニアとして参加)

Naked Shakespeare

Naked Shakespeare


○トッドラングレン「(Skylarking)」
アメリカで成功して欲しいという思惑から、抜擢されたのが、自身もアーティストのアメリカ人トッドラングレン。(デイヴがファンだった。)数あるXTCの逸話の中で、最も有名なのが、本アルバムレコーディング時のアンディとトッドラングレンとの確執でしょう。船頭は二人いらないということなのでしょう。慣れないアメリカでの暮らしで鬱憤もたまったか、コリンまでバンド脱退をほのめかしたり、バンド存続の危機に。シングル「グラス」のB面「ディアゴッド」がアメリカのラジオで頻繁に掛かりカレッジチャートでヒット。XTCアメリカでのレコード会社ゲフィンは、迅速な対応でレコード店の「スカイラーキング」を回収。「ディアゴッド」を差し入れたアメリカ盤を再リリース。皮肉なことに、本作に対するバンドの不満とは裏腹にアメリカでのカルト的な成功を収めることに。
Todd Rundgren  「Something / Anything」

Something / Anything

Something / Anything


○ポールフォックス 「(Oranges&Lemmons)」
前作のアメリカでの成功から、またアメリカ人プロデューサーを起用。白羽の矢はボーイジョージやイエスのリミックスをしていた若手ポールフォックス。彼自身XTCのファンで「是非プロデュースさせて欲しい。」とXTCの暮らす片田舎スウィンドンまで直接やってきて、その熱意に彼をバンドは受け入れます。パジャム然り、このフォックス然りXTCはプロデュース経験の浅い若手と組むのがうまく仕事が運ぶように思います。
10000マニアックス 「Our time in eden」(ポールフォックスプロデュース)

アワ・タイム・イン・エデン

アワ・タイム・イン・エデン


○ガスダッジョン 「(Nonsvch)」
ノンサッチのプロデュース選びは困難、まずティアーズフォーフィアーズのヒットメイカー、クリスヒューズに打診、本人も乗り気でしたがスケジュールが合わず、次にリリホワイト、パジャムとのコンビともう一度組むビッグプロジェクトが持ち上がりスタジオも抑えたのですが、二人共今や大物プロデューサー、時間が合わないのとリリホワイトの家庭の事情(不倫がバレて奥さんの機嫌を取らないといけなかった。)から白紙に。XTCはスタジオだけあってプロデューサー不在の状況に。紆余曲折の末時間の空いていたプロデューサーがエルトンジョンとの仕事で有名なベテラン、ガスダッジョン。バンド側はダッジョンの起用は本意ではなかったみたいです。結局、最終的にはダッジョンをクビにしてジェネシスのエンジニア、ニックデイヴィスにミックスを依頼。
エルトンジョン 「Goodbye Yellow Brick Road」(ガスダッジョンプロデュース)

Goodbye Yellow Brick Road

Goodbye Yellow Brick Road


○ニックデイヴィス「(Apple Venus Vol.1)(Apple Venus Vol.2)」
○ヘイドンベルダル「(Apple Venus Vol.1)(Apple Venus Vol.2)」
ニックデイヴィスは、「ノンサッチ」のダッジョンの仕事を引き継いで、作品を完成させた実績を買われての起用。ヘイドンベンダルはXTCのデビューEP(「3DEP」)をレコーディングした人物。彼の経歴は物凄く多彩で、ケイトブッシュ、エルトンジョン、ティナターナー、ビーバップデラックス、ミセスミルズ…。
XTC 「3D-EP」

3D EP

3D EP

Genesis 「We Can't Dance 」(ニックデイヴィスプロデュース)
We Can't Dance (W/Dvd)

We Can't Dance (W/Dvd)


冒頭にも書きましたが、XTCとの仕事をきっかけにプロデューサーとしてキャリアアップした人が沢山います。ジョンレッキー、リリホワイト、ヒューパジャム辺りは特に以後、時代を代表するプロデューサーになります。繰り返しますが、きっかけはXTCだと言う事。
だからXTCは偉大なんです。
(余談)今回の文章を書くに当たって、ネットでいろいろ検索して調べたのですが、「ポールフォックス」を検索すると、陶磁器の商品名ばかりヒットし、「デイヴィッドロード」に至っては、ゲイ専門のアダルトサイトに継ってびっくりしました。