「フレンズ」を世間は知ってもっと評価するべき。

ビーチボーイズ「フレンズ」

フレンズ

フレンズ

ビーチボーイズのアルバム「フレンズ」がとにかく好きです。この「好きさ」は一枚の単なるレコードの域を超えて「可愛らしさ」すら感じている僕です。(変態?)
ジャケットの可愛さもあるし、30数分というコンパクトさも可愛いです。
十数年前に「無人島に一枚レコードを持って行くなら何?」というお題に各著名人が答える、「無人島レコード」という本がありました。僕は当時、答えが見つかりませんでしたが、今なら「フレンズ」を持っていくと答えるでしょう。

レコード・コレクターズ増刊 無人島レコード

いわゆるBB5の低迷期にあって「フレンズ」が、他の低迷期のアルバムと圧倒的に違う点があります。大作「スマイル」が未完に終わっってしまった事が原因で、精神衰弱になり、永いうつ病生活が始まった闘病中のブライアンが、この「スマイル」制作時だけ奇跡的に一時的に復調している所です。つまり「フレンズ」は、未完の「スマイル」の前作の世紀の名盤「ペットサウンズ」以来のブライアンの現場一時復帰作品なのです。
「フレンズ」の前後に出た各アルバムは、曲数が足りない事と、ブライアン不在でパンチのある曲がない事などの理由から、未発表に終わった「スマイル」の断片というべき曲を1〜2曲必ず収録してアルバムの収録時間を稼いでいます。そうなると当然ながらそれらのアルバムには統一感を感じられず、ばらついた印象を持ってしまいます。(或いは「スマイル」収録予定だった曲だけ浮いてる印象。)
ですが、この「フレンズ」だけは、先ほど書いたようにブライアンが復調していた為、「スマイル」収録予定だった曲が一曲もありません。なので前後の各アルバムと比べて、アルバムにまとまりを感じます。この時期のBB5において奇跡のアルバムが「フレンズ」なのです。(ああ可愛い。)
もう一つのポイントが、ブライアンがダウンし、BB5のセールスが急下降していた時期だけにワーナーも、BB5の全盛期のような無理なタイムスケジュールのアルバムリリースを要求してこなくなり、のびのびレコーディングできた事も大きいです。

「フレンズ」の日本盤のライナーでブライアン自身が語っていますが、自身にとっても「フレンズ」はフェイヴァイリットの一つだと語っています。
その根拠ともいえるのが、2002年にリリースされたブライアンの「ペットサウンズライヴ」(ブライアンが自身のバンドで「ペットサウンズ」をライヴで全曲再現した作品。)の日本盤ボーナストラックが「フレンズ」収録の「メント・フォー・ユー」と「フレンズ」だという事です。

ブライアンウィルソン「ペット・サウンズ・ライヴ」

ペット・サウンズ・ライヴ

ペット・サウンズ・ライヴ

つまり「ペットサウンズ」が全曲演奏し終わった後に、アンコール的に「フレンズ」の1〜2曲目が演奏されるという構成になっています。この日本盤のボーナストラックにブライアンの意見が反映されているかは知りませんが、僕はこの構成には意味があるように思います。
つまりブライアンにとって「ペットサウンズ」と「フレンズ」はブライアンの中でつながっているんだと僕は思います。実際は「ペットサウンズ」と「フレンズ」の間には「スマイリースマイル」「ワイルドハニー」という2つのアルバムがあります。
当時は、ソロとかバンドとかユニットとか、今ほど「名義」というものが曖昧だった時代ですが、もし仮にこれらが今リリースされていたのなら「ペットサウンズ」と「フレンズ」はブライアンのソロアルバム、間の2作はBB5としてのアルバムになっていたんじゃないかと僕は思います。

BB5を全然聴いたことがない人に、一番に「フレンズ」を聴けとは言いませんが、このアルバムの魅力は多くの人に知ってもらいたいです。終始穏やかで喜怒哀楽や感情の起伏の少ないリラックスして聴ける作品です。無人島レコードの話に戻ると、無人島での生活は食糧の調達やら、火起こしやら、野生の猛獣の脅威やらと、何かと苦労が多いと思うんです。(あと虫刺されの痒みとか。)そんなへとへとに疲れた無人島での一日の終わりに「フレンズ」を聴いて、癒されながら眠りにつきたいです。