カールの改革とガラパゴス的アルバム

BB5に「カール&ザパッションズ〜ソータフ」という72年のアルバムがあります。カール&ザパッションズとは、元々BB5のデビュー前に、ステージに出ることを怖気づいたカールをやる気にさせるために名乗ったバンド名です。
その昔のバンド名を持ってきて、一体BB5どうしちゃったのか? 混迷していたというのが事実でしょうが、、このアルバム作成をリードしていた3男カールは本気でBB5のイメージを変えようとしたかったんだと思います。上の兄弟、ブライアンは精神的にボロボロ、デニスは自分の作品作りに夢中。BB5の音楽的知性、ブルースは極悪プロデューサーのジャックライリーとの確執で脱退。マイクとアルはインチキヨガの伝道師のマハリシヨギのTM(超越瞑想法)に夢中…。
こんな状況ではカールが「自分がしっかりしなきゃ」と思うのも当然です。南アフリカのバンド「フレイム」からブロンディとリッキーの二人を引き抜いたのもこの時期のカールによる判断でした。思うに「カール&ザパッションズ」というバンドはカール、ブロンディ、リッキーの3人のバンドだったとも言えないでしょうか。(カールはそうしたかったんじゃないかな。)それくらい従来のBB5らしさの少ない作品です。
そうした点で言えば、今でこそ世紀の名盤として語られる「ペット・サウンズ」も、ブライアンとスタジオミュージシャン達で作り上げたのだから、時代が時代ならブライアンのソロアルバムだったと言えるんじゃないでしょうか。
ですが、兄弟バンドの呪縛からか、ソロアルバムとして作品を作るという発想がそもそも無かった(そういう時代だった。)し、レコード会社がそれを許してくれなかったので、カール&ザパッションズの「ソータフ」という作品のはずが、ビーチボーイズの「カール&ザパッションズ〜ソータフ」というややこしい作品になってしまったのでしょう。
そんな紆余曲折あった作品ですが、僕は好きです。ミクスチャー対応した最近の耳で聴けば、他の70年代の名盤と言われる作品より古さが感じられない様に僕は思います。セールス面は作風の変化に関係なくやっぱりダメだったし、この2年後に出た「エンドレスサマー」というBB5のベスト盤が大当たりした事で、やっぱりBB5に変化の必要なし。夏、海、サーフィンの歌を唄っていれば間違いなし。とマイク主導のBB5に逆戻り。ブロンディもリッキーもバンドを離れ、カールの改革計画も失敗に終わりました。
だけど、だからこそこの「ソータフ」という作品は、BB5の長い歴史の中でも従来のBB5らしさの少ないガラパゴス的な魅力があるんだと思います。
Carl & The Passions - So Tough

Carl & The Passions - So Tough / Holland

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