今年の夏も「God Made The Radio」

2012年はなんの年だったか?自民が政権返り咲き…、そんな事よりビッグな事件がありました。「ビーチボーイズのデビュー50周年と、それに伴いブライアンウィルソン主導(ここ重要!)のビーチボーイズのニューアルバム発表、並びにワールドツアー」があった年です。
ブライアン主導のBB5のアルバムは1977発表の「LOVE YOU」以来です。以降ウィルソン3兄弟の、次男デニス、三男カールの死や、バンド名や著作権をめぐるメンバー内の骨肉の裁判闘争、うつ状態が続くブライアンの専属医師のユージンランディによる、治療とは言い難いマインドコントロール。ようやく病から復帰したブライアンのソロデビューシングルに被せるようにシングルをリリースするビーチボーイズのいやらしい戦略…。
特に後期BB5を引っ張って来た実質リーダーだった三男カールの死が決定打となり、BB5は3つに分裂します。マイク、ブルースの2人とデビュー時のみメンバーだったデイヴィッドを加えた「ビーチボーイズ」、アルが息子たちと結成した「アルジャーディーン、ファミリー&フレンズ」、そしてブライアンを慕う若手たちとブライアンが結成した「ブライアンウィルソンバンド」。この3グループがそれぞれBB5のヒット曲をそれぞれ演奏する時期が長く続きました。
分裂状態からリユニオンへのきっかけは、大きく2つあったと思います。
一つは、00年代のブライアンに音楽に対する意欲が戻って、人生の半分を寝たきりで過ごしたとは思えないくらいの完全復活をしたという点です。ダリアンサハラジャ、ジェフリーフォスケット等のサポートも大きかったと思います。あの伝説の未完の大作「スマイル」まで作り上げ、ワールドツアーまでする(行ってきました、中野サンプラザ。)という、夢のような事実に、頭クラクラしました。
二つ目はベストアルバム「The best of The Beach Boys」がダブルプラチナを取った記念にメンバーが一堂に揃った事が大きなきっかけになったと思います。一時期は顔を合わせるのも嫌だっただろう(と推測する)メンバーがにこやかに一枚の写真に収まる姿は、僕にとって衝撃でした。この頃からアルが事あるごとに「50周年にはリユニオンする。」とメディアに発言しています。(僕も含め大半のファンは半信半疑でしたが。)
2012年、信じられないことに本当に実現したリユニオンBB5のニューアルバム「ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ」が発売されました。夢のようでした。
「ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ」

ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ

ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ

基本はブライアンバンドを中心にマイク、アル、ブルース、デイヴィッドが合流する形。00年代のブライアンの活躍を考えれば当然でしょう。内容はどうだったか?BB5ファンのひいき目(ひいき耳)を差し引いてみてもこれは傑作だと思います。初期のサーフィンホットロッド路線が好きな人も、高尚な「ペット・サウンズ」が好きな人も、00年代のブライアンが好きな人も、皆納得の内容だったんじゃないでしょうか。
とにかく、僕にとっては物心ついて、初めてタイムリーに聴けたブライアン主導のBB5の夏の新作です。去年の夏はずっと聴いてました。今年の夏も聴くでしょう。
The Beach Boys - That's Why God Made the Radio

50周年の盛大なワールドツアーの終了後、マイクとブルースがリユニオンBB5を離脱…。さほどBB5ファンでないロック好きな人にとっては「何で?」とびっくりしたかもしれないですが、古くからのファンからすれば「ああ、やれやれまたマイクか…。」呆れつつ納得の結末です。BB5は現在2派に分裂しています。(デイヴィッドはどっちに付いたんだろう?どっちからも誘われてないかも。)
マイクの立場にしてみれば自身のバンド「元祖BB5」のリーダーとしてメンバー(息子もいるみたいです。)やスタッフを食わせていかなきゃいけない立場。いつまでもブライアン主導の「リユニオンBB5」に参加してもいられないのでしょう。そもそもブライアン主導な事自体が面白くなかったのかもしれません。僕はこれでよかったと思います。
ブライアン(とアル)は、「ビーチボーイズ」の名前なんかなくていいから、これからもいい作品を今後も残してくれたら僕は満足です。