アルバム「坩堝の電圧」

去年リリースされたアルバムですが、ここ数枚のアルバムの中ではダントツに気に入っています。やっぱりくるりは、(岸田、佐藤の)ユニットではなくて、くるりはバンドなんだ、ようやくまたバンドに戻ったんだと感じさせる作品です。
冒頭曲〜先行シングルの「Every Body Feels The Same」までの3曲の疾走感が今までになくて好きです。OASIS Blur Supergrass、そう、僕や岸田さんの年代は90‘sブリットポップにはまった世代です。HappyMondaysは語呂がいいから入れたのかな、ちょっと時代が逆戻り。(同じショーンライダーのバンドならBlack Grapeにははまりましたが。)
終盤、世界の都市名をメロディに乗せ歌うところ、あえて言うなら「平壌ピョンヤン)」をいれたら、「Every Body Feels The Same」の意味が強くなって、面白かったんじゃないかと思うのですが。まあ都市名言いだしたらキリないですが。
アルバム中盤のハイライトは震災地、相馬の事を歌った「SOMA」。この曲が震災の被害にあった(そしてまだ被災に苦しい生活をしている。)多くの人に聞いて欲しいと本当に思います。
アルバム終盤「沈丁花」「のぞみ1号」「Glory days」の三曲の流れも好きです。「Glory days」の終盤に「ばらの花」「東京」「ロックンロール」の歌詞が飛び出すところも、15年のくるりを総括して、新しいくるりの出発を感じさせる粋な演出だと思います。(この過去のヒット曲の歌詞やメロディを新曲に挟むテクニックは僕の好きなビーチボーイズもよくやっているのですが、それはまたの機会に書きます。)ちなみに歌詞にある「境港の同朋」とは、レコーディングからツアーまでサポートしてくれた境港出身のあらきゆうこさんの事でしょう。
くるりのメンバーチェンジの多さを快く思わない人、何回「新生くるり」って呼ばれているんだと非難する人が、僕の身近な所にいますが、リーダー岸田さんが、言うように、くるりとは名前の通り、転がり続けるライクアローリングストーンなバンドなのです。メンバー変わって、さらに新作も気に入らなかったらファン辞めたらいいんです。
ベースの佐藤さんは、岸田さんの難しい要求に必死に答えようと懸命に努力して(この辺、僕の勝手な想像も入っていますが、)その結果、今や日本で有数のトップベーシストになったと思います。
今回の新メンバーの加入にしてもそれまで以上に大きな決断だったと思います。今までの新メンバー加入と大きく違うのは、吉田さんは加入前、自身がリーダーのバンドでボーカル、作詞作曲を担当していたという点。要するに岸田さん以外のシンガーソングライターが加入したという事です。これは今まで9割9分、岸田さんがボーカル、作詞作曲を担当していた今までのくるりのスタイルを大きく変化させようとしている証だと、僕は思います。

くるり 「坩堝の電圧

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(初回限定盤B:DVD付き)

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(初回限定盤B:DVD付き)