自殺した親友との思い出,2

僕は、日本がバブルに浮かれていた時代はまだ子供でした。高校生の頃、山一證券が経営破たん、そしてバブルが崩壊。俗にいう「失われた20年」は、僕にとって大学時代から社会人になって現在に至るまでの期間に見事にかぶります。

この20年で、僕は「親友」を2人自殺で亡くしました。2人とも「失われた20年」の被害者だったと思います。

「友達」でなく「親友」としたのは、2人共、僕と同じミュージックラヴァーズで夜明けまでお酒飲みながら好きな音楽について語り明かせる仲だったからです。2人共、お酒が強く、お酒が好きで、命を絶つ頃はかなり依存していたようです。2人共、僕と違って、社交的で誰とでも仲良くなれるし明るい性格でした。

前回2人の内の1人の事を書きましたので、今回はもう1人の事を書きます。

20代後半で仕事をリストラで辞めた僕は、多少「燃え尽き症候群」のようになって、再就職もバイトもせず半年ほど引きこもり生活をしました。半年で済んだのは運が良かったと思います。辞めた会社から出た退職金と貯金よ奨学金制度で2年間学校に通う事にしました。(結局2年間を持たずに貯金は底をついて親から支援してもらいましたが。)

入学したのは、特殊な職業の知識や技術を学ぶ職業専門学校で、僕のように30代の生徒も多い学校でした。そこの同級生としてそいつとは出会いました。偶然ですが、同い年でした。

背が高くて、足が長くて、顔が小さくて、西洋の血が入っているんじゃないかってくらい彫が深くてパッチリ二重。(本当に同じ日本人なのか?ってくらい。)20代は東京でカメラマンのアシスタントをしていて、20代半ばには半年くらいかけてユーラシア大陸を横断して写真を撮りまくっていました。当然その風貌で周りにカメラマンがいる現場だからモデルにという要望もあったようですが、頑なに断った(という噂も)。全く僕には無いかっこよすぎる経歴。

ある日僕の車にそいつが乗る事があって、i-PODをシャッフルで流していると、ルーリードがかかって、それに反応してきてそこで「こいつも僕と同じミュージックラヴァーズだ。」と確信しました。それはそいつの家で飲み会をすることになって呼ばれたときにはっきりしました。壁に畳1畳分はあるかというスマッシングパンプキンズのポスターが貼ってあって(あんなのどこで手に入れたんだか…?)CD、DVDラックのセンスに「ああ、やっぱりだ。」と思いました。若い頃流行っていた洋楽、若い頃再発された旧譜…。多分今まで会ってきた人の中で一番趣味が近かったです。

そいつの家は学校の近くで、飲み会参加した他の友だちも近所で、僕だけ車で移動が必要な距離に住んでいたので、飲み会解散後,僕だけ一泊させてもらう事になりました。(その後も飲み会のたびに2〜3回泊めてもらったかな?)

2人で飲み直しながら(またこいつが酒好きな上に持っている酒がテキーラだのなんだのっていちいちオシャレ。)アンダーワールドの「EVERYTHING EVERYTHING」のDVD観たり、部屋を薄暗くしてレディオヘッドの「KID A」を「こうやって聴くのが最高。」と聴いたり…。ヤバい時間、空間をもう青春終わってるおっさん2人が、青春時代さながらに楽しみました。

アンダーワールド 「Everything Everything」
僕はCD、そいつはDVDを持ってました。

Everything Everything

Everything Everything

レディオヘッド 「Kid a」
レディへは2人の共通の好きなバンドの一つでした。

Kid a

Kid a

僕もそいつも学校通いながら、正直その道の職業に就く気はもうなくなっていました。僕は、再就職する前に何か気持ちのリセットがしたかったんだろうなと、当時を振り返ると思うし、多分そいつもそうだったんじゃないかな。そいつは、家庭の事情かなんかで卒業を待たずに中退しました。人望が厚い奴だったので、惜しまれながら盛大にお別れパーティーしました。

そのお別れから、1週間から10日もなかった頃だったと思います。
担任の先生から、そいつが実家で自殺した事を知らされました。信じられなかったです。そんな素振りは微塵も感じられなかったです。すぐにそいつの実家のある所まで車走らせて、葬儀場に行きました。眠っているようにしか見えなかったです。

自殺の前日も深酒だったようです。カメラマンという夢を捨てて実家に戻った事、そして何より彼は年を取る事が嫌だったのかも…。(ジミヘンやマークボラン、ブライアンジョーンズじゃないけど、彼の酒の煽り方を思い返すと、なんだか生き急いでいたように思うな…。)死人に口なし、遺書もなかったので全てが憶測でしかないですが…。コンプレックスだらけの僕は、見た目も良くて、性格も明るかった君に生まれ変われるものなら変わりたかったよ。ホントに…。

アンダーワールド - Born Slippy

レディオヘッド Everything In Its Right Place