RCサクセション「楽しい夕に」の喜怒哀楽

楽しい夕に : RCサクセション

楽しい夕に

楽しい夕に

アコースティックトリオだった70SのRCのライヴは結構過激て、実は80Sの派手な頃よりとんがっていたらしいと当時を知る数少ない方々はよく言われます。僕は後追いなんで、勿論タイムリーじゃないですが、昔から80Sよりも70Sのトリオ編成のRCを断然よく聴いていました。タイムリーじゃないけど聴きはじめたのが18〜20歳前後だったので、70S当時の清志郎さんと歳が近かった事が共感を持って聴けたのかなと思います。

今は無き音楽雑誌、SNOOZERの2007年9月号の特集「日本のロックポップアルバム究極の150枚」の1位が、このRCの「楽しい夕に」でした。そもそもの企画の趣旨が、「もうはっぴいえんどの「風街ろまん」が1位のチャートは見飽きた、これが新しいスタンダードだ。」というような事だったので、意外なものを1位にするという予想はできてましたが、RCの2nd「楽しい夕に」にはびっくりすると共に、自分の一番思い入れのある(けど評価の低い。)作品が選ばれたことに、自分の感性の鋭さにびっくり(と、自画自賛。)
RCと言えばブレイクしたのは80Sからだし、当時は売れなかったけどブレイク後、名盤だと語られるようになったのは3rd「シングルマン」です。僕は「楽しい夕に」もいいアルバムなのになと常々思っていました。(自画自賛。)

snoozer (スヌーザー) 2007年 12月号 [雑誌]

snoozer (スヌーザー) 2007年 12月号 [雑誌]

snoozer (スヌーザー) 2007年 12月号 [雑誌]

編集長タナソウの雑誌に対する熱意が落ちつつあった末期の「SNOOZER」。この企画も正直タナソウにとったら、不本意なものだったんじゃないかな。でも「楽しい夕に」のレビューは意外なほど的を得ていて、「楽しい夕に」が初めて真っ当な評価を紙面でされていて感無量でした。


「楽しい夕に」の喜 
1、「ラー,ラー,ラ,ラ,ラ」
アルバム冒頭曲。サビは全員で「ラーラー」の合唱だし、歌詞だけ読んだら楽しいだけの曲としか思えないのに、清志郎さんのあの素っ頓狂なヴォーカル。今聴いてもそう思うんだから当時耳にした人はどう感じたんだか(多分色物バンドでしょう。)ケンチさんのつんのめり気味な間奏のギターリフの独特さ。


「楽しい夕に」の怒
5、「9月になったのに」
9月になったのに相変わらず蒸し暑い事に対するイラ立ちの歌。政治や原発に怒ったその後の清志郎さんを思えば、ずいぶん小さい事に怒ってますが、アルバム全体に感じる事ですが、思うように売れないRCに苛立つ3人の怒りが演奏に現れているような気がします。


「楽しい夕に」の哀
7、「もっとおちついて」
もともと僕は洋楽志向なんで、あまり歌詞を気にして聴かないタイプなんで、今歌詞カードを読んで気づきましたがA,Bメロは女性の視点で唄われていて、サビはその女性に思われている男性の視点で唄われています。叫びに近い声で「もっとおちついて」と言われても、全く落ち着けそうにないです。


「楽しい夕に」の楽
10、「日隅くんの自転車の後ろに乗りなよ」
RCのメンバーとは幼馴染で、RCのローディーだった日隅くんの自転車の後ろにいつも乗っていた清志郎が、ある日から「あの娘」の後ろの方が乗ってて楽しいから、今日からは日隅くんは一人で乗ってね、というたわいもない歌。ですが、数年後、日隅くんが自殺した事で、歌詞の内容が思いのほか重くなってしまったような。